リハビリテーションルネサンス

 

 ・・・引き込まれた。

 

 認知運動療法だとか、そうじゃないとか、そんなものはちっぽけだ。

 そうじゃない、リハビリテーションとは本来どうあるべきなのか。どうあらねばならないのか。

 

 我々はリハビリテーション専門家だ。

 

 思想で止まってはらなない。理論でなくてはならない。

 

 とある昼下がり

 ”運動療法という名のもとに、マットの上でセラピストが男の子の麻痺した両足を曲げたり伸ばしたりしている。” 

 

そこに理論はあるのか?あるのは思想だけだ。

 

”今の、セラピストでは、この昼下がりの光景を直視できない。”

 

 この句読点に含まれた意味を。

 この文章の背景にある意味を。

 

そしてその昼下がりの光景を、私は、直視できるのか。

 

今でもそう考えている。

情報が飛び交う中で、見失ってはならないもの。

見失ってはならない、我々がなぜ存在しているのか。

なぜ存在し得たのか。なぜ・・存在を余儀なくされたのか。

 

どんな思想を持っていようと、リハビリテーション専門家であるならば、

一度、手にとって欲しい

 

そう切に願わずにはいられない。

あなたが ”切に” 目の前の人の回復を願うのならば。

2020.10/2

坂本隆徳

ペインリハビリテーションを生きて

 

私がこの本に出会ったのは,理学療法士として働き出した一年目の夏.回復期病棟に勤務しており,患者さんを担当させてもらえるようになったが,うまくいかないことばかりで毎日悩んでいた.失語症の患者さんを担当させてもらっていた当時,何かを伝えようとしているけど,私は理解してあげる事ができずに一緒に落ち込んだ.ふと本屋さんで手に取ったのがこの本だった.その場で数ページを読み,気づいたらレジの前にいた.この本は「セラピストの専門書」と「患者の体験記」,その隙間を埋めるような内容である.

 

「患者さんは物じゃない,その人を見なさい」

学生の時に誰しもが言われたであろう言葉.亡き恩師の沖田一彦先生も授業で『患者の語り』を大切にしなさいと何度も話されていた.

言葉の意味はわかる.だから,実習では患者さんの話を一生懸命聞いたであろう.しかし,分かってはいたが,正しく理解はできていなかった.当時の実習を振り返絵って見ても意識はしているものの全く活かせていないと思う.

この本を読み進めると,無知な私でも,このセラピストは患者さんに寄り添いながらリハビリテーションができている.なんてすごい人なんだ.こんな人がいるんだ.リハビリテーションにはこんな可能性があるのか.そう感じた.その日のうちに全て読み終え,その後も何度も読み返した.読むたびに熱いものがこみ上げてきた.

そこから認知神経リハビリテーションを勉強し始め,マスターコースまで行き,学会にも参加している.

患者さんが何を感じており,どんな世界で生きているのかを知るというのは容易なことではない.全てを理解してあげることはできることではないかもしれない.しかし,何かを伝えようとしていることは間違いない.日々の勉強と試行錯誤をしていく必要がある.

 

この本を読んでもう一つ感じたことは「温かい」ということ.一つ一つの言葉に優しさを感じた.初めて著者である江草典政先生にお会いし,お話させてもらうとすぐにわかった.この先生のお人柄を感じたのだと.膨大な知識に加え,このお人柄があるからこそ,あのようなリハビリテーションを行えるのだろう.今でも常に私の目標とさせてもらっている.

 

リハビリテーションの限界を感じている,目の前の患者さんに何をしたら良いかわからないなど,壁にぶつかった時にこの本を読んでほしい.

 

きっと何か得るものがあります.

 

 2020.5/20

濵﨑厚志